まちのタネって?
陽楽の森をみんなが集える場所にするために使えるかもしれないし使えないかもしれない、なんなら全く関係ないかもしれないネタをざっくばらんに書き残すコーナーです。
鹿猿狐ビルヂングの中川政七商店を訪れた際、窓際のベンチのクッションの上に木でできた鹿の置物が置かれていた。最初は商品が誤って忘れられているのかと思ったけれど、一席ずつ空けて等間隔で置かれているのでそうではないらしい。なんてことはないコロナの感染対策、「間隔を空けて座ってね」を言葉ではなく鹿の置物で表現しているのである。
よく見かける張り紙に「間隔を空けてご利用ください」というものがある。何も話さない鹿の置物と比較すると、言葉でのコミュニケーションはとても「限定的」で「強い表現」であることを感じる。「間隔を空けてご利用ください」はすごく雑に解釈すると「優しく命令している」一方向的な表現だ。受け手には選択権はない。トラブルを避けるためには命令に従うしか道はない。
クッションに置かれた鹿は具体的には何も表現していないが、「すでに埋まっています」「鹿が利用しているのでごめんなさい」「ここは使えない席です」という感じのやんわりしたメッセージを、受け手に委ねる形で伝えている。感じ取る気持ちや思いやりがなければ気づいてもらえない表現だけれど、逆に相手にその気持ちがあると信じている優しい表現だと言える。
相手の心持ちを信じたデザインは美しい。もしかしたら伝わらない人もいるかもしれないが、別にコミュニケーションのコストをケチらなければ、話かけて理解してもらえばいいのだ。